多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

外国人材活用の最前線

2020年4月27日

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 厚生労働省によると、2019年10月末現在で日本の外国人労働者数は、過去最高の約166万人となっている。日本政府は、高度な知識と技能をもつ外国人材を受け入れ、日本経済の生産性向上やイノベーションを加速させる取組みを進めており、今後も外国人労働者は増加することが予想される。
 近年一段と存在感が増す外国人労働者であるが、企業は外国人を人材としてどのように活用しているのだろうか。今回の特集では、八王子市にある栄鋳造所の先進的な事例を通じて、外国人材活用の最前線に迫る。
 (ASIA Link小野氏への詳細なインタビュー内容は、こちらからご覧いただけます。)

外国人材の採用から海外進出へ


 「当社は、外国人材の活躍で海外とのネットワークが大きく広がった。外国人材の活用は難しく思えるが、経営者の行動力やチャレンジ精神さえあれば中小企業にもできる。」八王子市でアルミ鋳物業を経営する栄鋳造所の鈴木社長は、そう力を込める。同社は、現在売上の8割を海外取引で占め、グローバルにビジネスを展開している企業だ。従業員数は30名程だが、そのうちの約3割が外国人材となっており、7か国語の問合わせに対応できる。さらに、アメリカやフィリピンなど4か所の海外拠点を有している。このように積極的に海外展開を進める同社であるが、10年前は、100%国内取引のみの中小企業であった。

外国人材を採用した経緯

 同社が外国人材を雇用するきっかけになったのは、2008年のリーマン・ショックである。それまで国内の自動車関連企業からの受注が主力であったが、リーマン・ショックを機に売上が激減し、企業存続の危機に陥った。会社を立て直す必要に迫られた鈴木社長は、海外進出を目指すことにした。

 海外視察を繰り返す中で印象的だったのは、アメリカのシリコンバレーでのことだ。シリコンバレーにある中国の中小企業を視察した際に、日本よりも品質の低い製品を製造しているにも関わらず、2年先まで受注があることを知り、鈴木社長は驚きを隠せなかった。

 「当社では、2~3か月先の受注にも苦労しているのに何故だ。」鈴木社長は、その答えを”言葉の壁”に見出した。そこで、それまで国内取引しか行ってこなかった会社を変えるべく、自身を含めて社内での意識改革を進める必要性を感じ、まずは外国人材を採用してみることにした。

栄鋳造所 代表取締役 鈴木氏

難民の採用

 就労ビザがあり長期間雇用できる人材を探していた同社は、難民に着目した。当時、日本には難民認定許可申請中の難民には、在留資格「特定活動」が付与されたのち、就労が許可される難民が多くいることが分かったためである。

 そこで、認定NPO法人難民支援協会を通じて、難民の採用を始めた。当初は採用した人材に研修を受けさせず、そのまま製造現場に入れただけであったため、言葉が通じない、勤務中に平気でタバコを吸いに行くなど、日本人と外国人との従業員間で様々な問題が山積していった。多くの外国人材が退社していったが、海外進出を決心していた鈴木社長は、外国人材の採用を続けた。

 従業員間で社内に軋轢が生まれ、痺れを切らした当時の工場長が「これ以上、外国人を雇うなら会社を辞める」と直訴してきたが、それでも鈴木社長はぶれることなく外国人材の採用を継続していった。

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