多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

中小企業におけるDXへの取組み

2024年1月25日

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企業のDXを後押し/アップグレード株式会社


アップグレード株式会社 代表取締役 竹内正人氏

 アップグレード株式会社は、DX推進やそれに伴うデジタル化の業務を支援する企業だ。府中市に本社を構え、データ入出力業務やITソリューション、BPO(業務請負)サービスの提供などを行っており、東京近郊のほか大阪や鹿児島の事業所を含めると、およそ200人の社員が働いている。

 中でも近年伸びているのが、BPO関係の事業だ。BPOとは、自社の業務を外部に委託する形式の一つで、同社ではコンサルティングから人材派遣、実際の業務請負までをワンストップで提供できるのが強みである。DX推進や、税務関係書類の電子保存が義務付けられた電子帳簿保存法の改正などの流れにより、急速に需要が伸びているという。紙の資料を大量に保有する企業や、テレワークの定着によりデジタル化を進めたい企業など、さまざまな業界から業務を請け負っている。

 今は依頼や問い合わせのほとんどが大手企業からであるが、同社代表取締役の竹内正人たけうちまさと氏によると、この先こうした取組みは中小企業でも必要になるとのこと。今いる人員のままで業務の効率化を高めることはもちろん、資料を電子化することで、破損や紛失といったセキュリティ面での安心も得ることができるのは、中小企業にとって大きなメリットになる。「WEBでの打ち合わせやデータでの資料のやり取りは、大手企業と取引する上で欠かせない条件になってくる。中小企業にこそ、電子化やデジタル化は必要ではないでしょうか」と竹内氏。また、こうした動きは働き方改革にもつながっている。本来の業務に集中できる体制を整えることで、社員のやりがいやモチベーションが高まることから、いずれは人材採用にも大きく関わってくる可能性があるという。

 同社によると、システム導入による費用対効果が見えづらいことから二の足を踏んだり、DX関連の部署をつくっても社員がデジタル化にネガティブなイメージを抱いていることなどが弊害となり、途中で頓挫してしまう企業も多いのが実情だ。それでも、そこから一歩踏み出していくことで得られるメリットは多い。DXの必要性を各企業の経営者にどのように認識してもらうかが大きな課題ではあるものの、そうした認識が広がれば中小企業におけるDXは大きく躍進する可能性を秘めている。竹内氏は「業務を“見える化”して、人的リソースを割くべきところと、デジタル化できるところを切り分けるだけでも、大きな変化がみられるはず。まずはDX推進を掲げて、できることから始めていく。社員が本業に集中できるようにDXを進めるのが重要」と力を込める。

DXで変革を遂げる中小企業


 今回インタビューを行ったDX推進に積極的な2社では、経営資源が限られる中であってもDXに比重を置いて事業を行うことで、結果として各企業の抱える課題の解決や、解決の糸口をつかむことにつなげていた。

 中小企業がこうしたDX推進やデジタル化に取り組むには、まずは経営者自らが先陣を切って進めていくことが必要だ。そして取組みを進めるにあたっては、補助金や専門家の派遣、外部への委託などさまざまな選択肢を上手く活用することで、自社に合ったDXの形が見つかるだろう。DXは、中小企業にとって会社をさらに成長させる可能性を秘めている。(畑山若菜/編集:野村智子)

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