多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

飲食業の将来を見据えた取組み

2023年10月25日

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コロナ禍で大きな影響を受けた飲食業界。いくつもの波を乗り越え社会がさまざまな変化を遂げた今も、飲食店を取り巻く環境は目まぐるしく変わり続けている。入れ替わりの激しい飲食業界を生き抜くために、各企業では日々どのような工夫を凝らしているのだろうか。今回の特集では、多摩地域で飲食業を営む3社の動向を追った。

飲食業を取り巻く数々の変化


 私たちの生活に欠かすことのできない“食”を扱う飲食業。1970年頃から始まったレストランチェーン店の展開により、徐々に日常の中に外食文化が入り込むようになった。2000年代には消費者の健康志向やグルメ志向などの高まりに応じ、飲食店の業態はより多様化していった。そして近年は、コロナ禍で大きな打撃を受けた。直近では業界全体の売上げは回復しつつあるものの、居酒屋など一部の業態では依然厳しい状況が続く(図1)。

 時代とともに加速したデジタル化は、飲食業にも多くの変化をもたらした。マーケティングツールとして紙のチラシに加えてWEBサイトやSNSが登場したことで、店側はより低コストかつ手軽に、リアルタイムの情報を発信することが可能となった。SNSや口コミサイトには飲食店の情報や写真があふれ、私たちはいつでも簡単に店を選ぶことができる。ほかにも、紙に手書きで受けていた注文はモバイル端末への入力に変わるなど、店の運営面でもデジタル化が進んだ。今では来店客の情報をシステム上にデータとして集約し、経営に活かすこともできるようになった。さらに、キャッシュレス決済やデリバリーサービスの導入はごく一般的な手段となり、セルフレジや配膳ロボットの導入なども進んでいる。このように、飲食業を取り巻く状況は格段に進化を遂げてきた。

 加えて、現在多くの飲食店で頭を抱えているのが人材不足だ。飲食業は勤務時間や休日が不規則であるため労働環境が整えづらいうえに、他業種に比べ利益率が低いといった背景などから低賃金である印象も根強い。コロナ禍では、営業すらままならない状況が続いたことで多くの離職者が生まれた結果、客足が戻った今、以前に増して人材不足に陥っている飲食店もある。

 そのような状況の中、訪れた人に美味しい料理を提供するだけではなく、時代の変化に合わせた工夫を行っている企業では、どのような取組みを行っているのだろうか。多摩地域で事業を営む3つの飲食店に話を聞いた。

図1 飲食店における売上高の推移(対2019年同月比)

(一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」より当研究所作成)

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