多摩けいざい

お客さま景気動向インタビュー

有限会社バーゼル洋菓子店

代表取締役 渡辺純氏

2021年4月26日

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 1969年に創業し、八王子市を中心に10店舗以上を経営する老舗の洋菓子店。「永続する地域一番店の創出」という経営理念のもと、永く地域で愛される店づくりを続けている。先代から受け継いだものを活かしながらもチャレンジ精神を大切にしており、コロナ禍で始めた自社で受注から配達まで行うデリバリー事業が好評を博している。

2019年高尾山の麓にオープンした「TAKAO COFFEE」の店内の様子

会社の概要について教えてください。


代表取締役 渡辺純氏

 私の父である先代が、スイスのバーゼルから帰国し、1969年に京王八王子駅前に洋菓子の製造販売と喫茶の業態で開業したのが始まりです。現在では食事メニューを充実させ店内での飲食にも力を入れています。コロナ禍でテイクアウトが増加したこともあり、直近の売上における洋菓子の販売と飲食の構成比は、5対5程度で推移しています。今経営しているのは12店舗ですが、先代の頃から通算すると50店以上作ってきました。様々な形態の店舗があり、提供するメニューはもちろん、内装やインテリアも店舗ごとに異なっています。また、当社では上質な商品を提供するために、厳選された材料を使用しています。カットケーキのサイズが大きいことも当社の特徴の一つです。

コロナ禍での経営動向はいかがですか?


 現在、飲食業界は厳しい状況ではありますが、当社ではテイクアウトが好調なこともあり、売上は前年よりプラスとなっています。もちろん、店内での飲食が減少しているため、その分の人件費を削るなどの努力はしています。店舗で働くスタッフには、コロナウイルスの流行が始まった頃、働き続けるか休みを取るかを選択してもらいました。休むことも自分や家族を守るための選択ですし、結果的に会社を守ることにも繋がります。

 当社ではコロナ禍をチャンスと捉え、“生き残ったもの勝ち”の精神で積極的に挑戦しようと社員に伝えました。その結果、経営に大きな変化が現れています。例えば、2020年4月に長年機会をうかがっていたデリバリー事業を始めました。現在、月1,000件程の注文があります。デリバリーを始めたことで、これまで店舗への来店が難しかったお客様からも需要があることが分かったほか、思わぬ副産物もありました。それはフードロスの削減です。まず、デリバリーでは注文を受けてからケーキを作るので、ロスが減少しました。また、各店舗間で連絡を取り合い、デリバリーカーで在庫を動かすことで更にロスを大きく減らすことができました。洋菓子の世界では、通常製造した商品のうち5%はロスが発生しますが、当社ではデリバリーを始めたことによってロスは1%程度まで減少しました。コロナ禍を逆手にとり挑戦を続けることで以前とは収益構造が全く変わり、結果的に現時点で過去最高の利益となっています。ただし、デリバリー事業にはニーズが多くある一方で、コストがかかることが課題であり、今後は一件当たりの販売単価を上昇させる必要があります。例えば誕生日や記念日での利用を想定して、ケーキだけでなく花束やキャンドル、飾り付け用品をセットにした商品の販売も考えています。

 その他現在、SNSを活用したダイレクトマーケティングにも力を入れています。SNSで繋がったお客様に向け、商品の割引価格での販売や、限定商品のご案内をしています。SNSによるマーケティングには非常に手ごたえを感じているので、今後も積極的に活用していきたいです。

京王八王子駅前「Brasserie BASEL」のショーケース

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