多摩けいざい
特集 多摩のうごきを知る
アイデアと技術力で多摩地域からエンターテインメントを生み出す
株式会社ロボットライド/株式会社ON-ART
2025年4月25日
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映画や音楽、ゲームなどに代表されるエンターテインメントは、人々を楽しませたり、感動や希望を与えたり、時には社会や文化の一部となるなど、私たちの豊かな生活に活力や彩りを与えてくれる。 時代とともにその在り方は常に変化し多様化しており、新たな領域のエンターテインメントが生まれ続けている。近年は没入型や体験型と呼ばれるものや、子どもの学びにつながるコンテンツなども人気が高い。今回は、多摩地域でこれまでにないエンターテインメントを生み出してきたものづくり企業2社にインタビューを行った。八王子市の株式会社ロボットライドはロボットを軸に、立川市の株式会社ON-ARTは恐竜を軸に、アイデアと技術力を融合させたエンターテインメントで会社を発展させてきた。
科学技術で夢を叶える、搭乗し操縦できるロボットスーツ
/株式会社ロボットライド
八王子市の株式会社ロボットライドは、外骨格ロボットスーツ「スケルトニクス」を開発し、イベントなどで展示や実演、搭乗体験を行っている。スケルトニクスは電動モーターを使用せず、装着した人の動きに連動して動くロボットだ。全長約3mの大きさに対して重さは約30kgと軽量で、子どもから大人まで安全に操作できる設計が施されている。国内外のイベント出演のほか、特撮アニメやコンサート、ミュージックビデオ、ファッションブランドのポスターなど、活躍の場は幅広い。
スケルトニクスを装着した様子。手は指の動きまで連動する
スケルトニクスの開発のルーツは、開発者である阿嘉倫大氏が沖縄高専在学中に参加したロボットコンテストに遡る。当時から二足歩行のロボットを製作し全国大会で優勝するなど、高い技術力を持っていた阿嘉氏は、そこで培ったノウハウを基に「人がロボットに乗る夢を叶えたい」と、スケルトニクスの開発に着手した。試作機の動画がSNSで大きな反響を呼び、イベントなどへ出演するようになったスケルトニクス。同社は2013年に法人化し、順調に事業を展開してきた。しかし、コロナ禍でのイベントの中止が大きな打撃となり事業縮小を余儀なくされ、現在の代表である宮本大輔氏が事業を引き継ぎ、2021年に再スタートを切った。
現在はスケルトニクスによる外部イベントやメディア、コンテンツへの出演のほか、特注品の開発や販売も行う同社。週末にはスケルトニクスの搭乗体験ができる予約制の工場見学を開催しており、子どもに貴重な体験をさせたいと、近隣地域だけでなく遠方からも多くの親子連れが訪れている。宮本氏は「来てくれる方々の反応が、開発や事業運営のやりがいにつながっています。スケルトニクスをきっかけに、子どもたちにロボット技術に興味を持ってもらいたい」と話す。
製造は基本的には自社で行っているが、特撮番組や特別なオーダーがあった場合には、外装パーツの製作を同じ八王子市内の造形メーカーに依頼している。見た目のカスタマイズ性が高く、多様な用途に応じて雰囲気を変えることができるのもスケルトニクスの強みだ。
同社では2024年より、新たな取組みとして「R-FIGHT」を展開し始めた。上半身にロボットを装着し、機体に内蔵されたセンサーにより打撃が判定される対戦型アトラクションだ。現在は、東京タワーのアミューズメント施設などに設置されている。得点はディスプレイ上に表示され、観客がタブレットを使って応援することもできる、ロボットとデジタル技術を融合させた新たな形のコンテンツだ。体験した人の多くは非常にエキサイトするといい、海外の観光客からも人気が高い。
この先も、人々が抱く「ロボットを操縦したい」という夢をスケルトニクスで叶えるとともに、将来的にはR-FIGHTをスポーツ競技として発展させ、世界的なロボットエンターテインメント市場を開拓するのが同社の目標だ。
R-FIGHTの対戦シーン。中央のディスプレイに対戦状況が表示される