多摩けいざい

多摩のうごきを知る

持続可能な地域づくりに向けた檜原村の挑戦

檜原 森のおもちゃ美術館

館長 大谷貴志おおたにたかし氏(NPO法人東京さとやま木香會 理事)

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檜原村の木材が豊富に使われた館内の様子(写真は9月のオープン前のもの)

オープンに至るまでの経緯と、大谷さんが館長に就任した経緯について教えてください。

 2014年に、村で林業を営む事業者が村長に宛てた一通の手紙から、全てが始まりました。当時衰退しつつあった村の林業を、もう一度盛り上げようと取組むその事業者からの手紙には「新宿区にある東京おもちゃ美術館をぜひ見に行ってみてほしい」といった趣旨の内容が書かれていました。その後、東京おもちゃ美術館に視察に行った村の担当者は、国内外の優れたおもちゃや木のおもちゃを多数揃え、子どもから大人まで多世代が楽しめるこの施設の素晴らしさに感銘を受けたそうです。そして、村の林業の発展のために「檜原村トイ・ビレッジ構想」を立ち上げ、村におもちゃ美術館の設立を目指すことになりました。

 私がこの計画を知ったのは2019年です。当時は村に暮らしながら前職である東京都庁に勤務していました。この頃、母校である旧北檜原小学校が取り壊されることになり、私は地元の仲間と共に地域の人を集めて「北檜原小学校を送る会」を開催しました。当日はみんなで校舎の掃除をして、教室には各自が持ち寄った昔の文集を飾り、校庭で運動会を行って、村の思い出が詰まった校舎に別れを告げました。その中で、学校の跡地はどうやらおもちゃ美術館というものになるようだ、ということを初めて知りました。詳しい話を聞くと、村が運営先を探しているところで、できれば地元の人に頼みたいと考えているということでした。「これは、私がやるしかない」と思い立ち、都庁を退職してこちらに専念することにしました。周りの人には驚かれ、何を考えているんだ、などと散々言われました。それでも、妻だけはやりたいようにやってみては、と私の決断を尊重してくれました。そして、都庁を退職し卒業生の仲間を集めてNPO法人東京さとやま木香會を立ち上げました。家族の理解や協力があったからこそ、今の私があると思います。

館長の大谷氏。館内の窓からは村の風景を眺めることができる

檜原村で生まれ育ち、現在も村に住む大谷さんから見た村の魅力を教えてください。

 一番の魅力は、やはり自然です。緑に囲まれているからか、夏でも比較的涼しく過ごしやすい環境です。私の自宅にはエアコンはありません。隣近所とのつながりは深く、周りは高齢者だけの世帯も多いので、困ったことがあれば助け合います。私も村で子どもを育てましたが、子育てをするにはとてもいい環境だと思います。56歳の私は、村ではまだまだ若手の扱いです。

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