多摩けいざい

多摩のうごきを知る

高尾山観光の現在と未来

京王電鉄株式会社

開発事業本部 開発企画部企画担当 課長 十河信介じゅうかわのぶすけ

駅徒歩1分の好立地で、地域の新たな拠点となるタカオネ

高尾山口駅前に新たに開業する宿泊施設「タカオネ」の概要について教えてください。

 高尾山地域は京王線沿線の中でも数少ない観光地であり、当社では以前から継続的に地域の魅力づくりに取り組んでいます。タカオネについては、2018年に駅前にある既存の建物を取得し、地域に相応しいホテルとなるようリノベーションを行い、2021年7月17日に開業する予定です。タカオネは、個人や家族の利用に留まらず、企業や大学のサークルなどの方々に“合宿”のような形で利用していただくことを想定した施設です。高尾山地域は日帰りで楽しむ方が多い場所ですが、実は掘り下げると一日では回りきれないほどたくさんの魅力に溢れています。タカオネでは、今まで知られていなかった高尾山地域の新たな楽しみ方を発信し、紹介していきたいと思っています。

 今の段階では、当初の想定よりも家族で利用したいというお客様からのお問い合わせを多くいただいています。やはりコロナ禍であるため、家族だけで近隣の自然を楽しみたい、というニーズが多いのだと思います。高尾山地域の魅力は、都内の方であれば、移動に要する時間が短く済み、現地で過ごす時間を長く取ることができる点です。現地での過ごし方としては、登山はもちろん、他にも革製品のクラフト体験や陶芸体験など、多様なアクティビティを準備しており、今後それをさらに増やしていく予定です。地域でさまざまな活動する方々を訪ね歩き、協力を依頼しています。

 コロナ禍での開業となるため、残念ながら大々的なオープニングイベントやパネルディスカッションなどを行うことはできませんでした。その分、地域で活動する方々を一軒一軒取材させていただきSNSで発信を行うなど、地道な活動を重ねました。結果的には、私たちも知らなかった高尾山地域の良さや楽しみ方を知ることができました。

タカオネの中庭では焚き火が体験できる

地域の事業者との連携についての考えをお聞かせください。

 長い歴史の中で発展してきたこの場所で、昔から商売をされている方のお邪魔になってはいけませんし、あくまでも私たちは新参者の立場です。それでも、高尾山地域を今後ますます発展させていくために、地域の皆さまと連携を図りながら一体となって活動させてもらえると嬉しいです。例えば、お昼は高尾山に登ってお蕎麦を食べ、夜はタカオネに泊まって楽しんでもらうなど、お互いに誘客し合う仕組みづくりを行っていきたいです。

 宿泊しなくても、高尾山地域を訪れた方にはタカオネに気軽に立ち寄ってもらえると嬉しいです。地域の情報交換や情報収集ができる場となることで、高尾に訪れた方を他の場所へつなぐ出発点となることを目指しています。

今後の展望について教えてください。

 コロナウイルスの流行後、郊外の価値が見直されており、テレワークやワーケーションなど、働き方も多様化しています。タカオネは、コワーキングスペースとしても使っていただくことができます。コロナウイルス終息後は、当然インバウンドも視野に入れています。外国人の方にとっても新宿からのアクセスが良く移動時間も苦にならずに、ミシュラン三つ星の山に泊まれる、という条件は魅力的に映ると思います。また、日本遺産にも認定されましたので、それをどう誘客につなげていけばいいのか、これから掘り下げていかなければいけません。

 今後も様々なニーズを吸い上げながら、京王グループとしてどのような事業展開ができるかを常に先を見据えて考えています。時代の変化に柔軟に対応できるように、上手く時代を捉えてサービスを提供していきたいです。


(インタビュー: 2021年7月5日)

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