多摩けいざい

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中小企業とテレワーク

向洋電機土木株式会社 インタビュー

2021年4月26日

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人材採用への影響はいかがですか?

 私の入社時に20人だった社員数は、現在では39人となりました。さらに、1人しかいなかった女性社員については14人まで増えました。社員全体の割合としては3分の1以上が女性となっており、これは男性が多い建設業界ではとても珍しいことだと思います。女性社員は、広報や事務、積算業務などの内勤だけでなく、現場でも活躍しています。

 また、当社の取組みが成果を上げるにつれて様々な場所で取り上げられるようになったことで、今では全国から数多くの入社希望があり、実際に地方から引越ししての入社者も多数います。年々当社への入社を希望する人材は増えており、募集を行うと毎回何百人もの応募があります。そして中小建設業にも関わらず、驚くほど優秀な人材が次々と入社しています。そのような社員は、必要な資格をどんどん取得していくため会社にとって戦力となりますし、先輩社員にとっても良い刺激となっています。

テレワークの効果については事前に想定していたものだったのでしょうか?

 ある程度の効果は事前に想定していました。ですが、ここまで大きな成果を上げることができたのは、社長が外から来た私に、改革を行う裁量権や決定権を全面的に与えてくれたからだと思います。当初は戸惑いがあった社員たちも、私のやり方に一切口を出さない社長の姿を目にしたことで社長の熱意と本気度を理解し、前向きに取り組んでくれるようになりました。そんな社長に、一つだけ言われたことがあります。それは「変化や進化に順応できない社員を見捨てるようなことだけはしないでほしい」ということでした。この社長の器の大きさこそが、当社がテレワークを始めとした改革を成功させることのできた理由の一つだと思います。

新型コロナウイルス流行によってテレワークをする企業が増えています。それによる貴社への影響はありますか?

 コロナの流行によって社会は変わりました。当社がテレワークを始めた頃、他社からは「なぜこんなことをやっているの?」という目で見られていましたが、今ではテレワークを使った働き方は珍しいことではありません。ただ、当社ではテレワークを使った働き方は既に定着しており、コロナ禍で初めて導入した他社とはどうしても足並みが揃わず、そういった意味ではあまり影響はないかもしれません。強い繋がりがある取引先から依頼されてテレワーク導入のレクチャーをすることはありますが、それは当社にとっても打合せや会議をオンラインで行えるなどのメリットがあるからやっていることです。そして、当社ではコロナ禍の中でもさらに一歩先を行く取組みを行っています。例えば、余暇が制限される社員のために伊豆にワーケーションのための施設を購入したり、全社員のPCR検査を毎月社内で行ったりするなど、社員の福利厚生を図っています。また、取組みは社内におけるものだけではなく、社会貢献活動にも力を入れています。

同社では「テレワーク先駆者百選総務大臣賞」を受賞している

最後に、今後テレワークを導入する企業に向けてアドバイスをお願いします。

 周りがやっているから、または政府が推進しているからと、なんとなくテレワークを取り入れている会社もあるかもしれません。明確な目的を決めないままテレワークを始めると、コロナの流行が終わると共にテレワークも終わってしまうでしょう。テレワークはきちんとその意義を理解し、正しい形で導入すれば、必ず利益や効果は得られます。どうせやるのであれば、きちんとやった方が会社の為になります。ただし、メリットだけではなくデメリットもあり、テレワークにした方がかえって効率が悪くなることもあります。あくまでもテレワークは多様な働き方の中の選択肢の一つであり、まずは経営者が率先してテレワーク導入の道筋を立て、何を目的にするのかを明確にして取り組むことが重要です。

 また、テレワークを導入するにはそれを主導する存在が必要です。そのためには経営者自身がその立場に立つか、社員の中から適任者を選任する、もしくは当社のように外部から人材を獲得することなどが考えられます。よく、そんな詳しい人材は社内にいない、と他社から言われるのですが、推進させたい気持ちがあるならば、まずは自社の現状を把握した上で、行動を起こす努力が求められるのではないでしょうか。


(インタビュー日時: 2021年3月23日)

会社概要

向洋電機土木株式会社
代表取締役社長: 倉澤 俊郎
本社所在地: 神奈川県横浜市南区井土ヶ谷下町16-6
業種: 電気設備工事

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