多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

危機に立ち向かう多摩地域の中小企業

経営者インタビューNo.03 エコア株式会社

2020年7月27日

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 「衛生管理」という観点から食品の安全管理や、ビルの環境管理などを行う同社。政府や各種業界団体の衛生管理に関するガイドラインの作成等にも携わるなど、スペシャリストとして幅広く活動している。同社の宮澤社長に、コロナ禍での業況や今後の事業展開についてお話を伺った。

代表取締役社長 宮澤 公栄氏

貴社の概要について教えてください。

 当社では、環境衛生管理の仕事を行っています。環境衛生管理という領域は幅が広く、当社では、食品の安全管理やコンサルティングをはじめ、ホテルのベットメイクやビルの法定検査、建築物環境衛生管理、一般住宅の害虫駆除・カビ対策など、様々な業務を行っています。

 近年、食品を取り扱う衛生レベルの見直しが社会的な課題となっています。当社では食品の安全管理を行う業務として、専門のコンサルティングスタッフが食品安全規格であるFSSC22000※1や、HACCP※2などの研修や文書作成の業務を行っています。新型コロナウイルスの関係では、全国スーパーマーケット協会の新型コロナウイルス対応のためのガイドラインを作成しました。

 また、食品安全に関するコンサルティング業務では、食品製造工場を建設する際のコンサルティングを行っています。大手企業からの依頼も多いのですが、注目しているのは食品衛生管理の標準化が進んでいない伝統産業の衛生管理に関するものです。伝統産業では、衛生度合いが分からない、理化学的な安全性が分からないといった部分が多いことから、当社が衛生的な製造環境を作るためのコンサルティングを行っています。また、農林水産省からの依頼で、食品衛生に関するガイドライン等も作成しています。例えば、高野豆腐、醤油、島豆腐、あんぽ柿など、こちらも伝統産業が多いですね。

 これまで、私たちは一貫して衛生管理のスペシャリストとして活動してきました。現在では、その実績が認められ衛生管理の専門家として、政府から助言を求められるまでに成長しました。

同社作成のガイドライン 厚生労働省HPより

4~5月の業況はいかがでしょうか。

 新型コロナウイルスの影響でホテルのベッドメイク事業の業務は止まってしまいましたが、需要が増加した業務もあります。その中で、特に需要が急増したのは、新型コロナウイルス消毒施工と消毒液です。当社では、お客さまからの要望に対応するため、5月に消毒液の生産設備を増設しました。新型コロナウイルスの収束が見通せない中で、新たに設備投資をするのに不安がなかったわけではありませんが、必要な投資と判断して実行しました。

新型コロナウイルス感染症の発生から、経営者としてどのように行動してこられましたか。

 新型コロナウイルスの影響を受けて業績が悪化してしまうと、日頃がんばっている社員に最終的に迷惑をかけてしまいます。衛生管理の仕事を行ってきた経験上、今年1月には日本で短期的に感染を収束させることは難しいだろうと判断し、1月下旬には経営戦略をすべて作り直しました。具体的には、事業部門ごとに計画を見直したうえで、業務が停滞または停止するだろう事業の立て直しや、需要が増加する事業への投資などを判断していきました。今後の投資としては、新たな消毒ニーズに対応した装置や、zoomを活用した非対面でのコンサルティング手法などの商品開発を進めていきます。

 2月には、修正した経営計画を社内で共有し、また社員には「防疫のスペシャリストとして業務をするように」と伝えています。当社では、これまでも衛生管理のスペシャリストとして、困っている会社を助けるために事業を行ってきました。SARSやデング熱などの研究を行ってきたノウハウもあります。コロナ禍の今だからこそ、当社のニーズがさらに高まると思い、業務を行っています。

今後の中小企業経営には何が必要と思いますか。

 今後、時代がどう変わるかはわかりません。そのため、売れる商品にしがみつくのではなく、社会が何を求めているか、常に一歩先を考えなければ、足元をすくわれてしまいます。これからは、大企業・中小企業を問わず、変革対応能力がなければ生き残れないと思っています。当社としては、社会の中で意義のある活動を模索しながら研究開発などを進めていきます。このことを継続していけば、経営者として企業の存続に不安はありません。

最後に、ポストコロナ時代に向けて、今後の事業への意気込みをお願いします。

 これまで以上に、変革が早くなると思います。当社の環境衛生管理事業も変化します。今までは現場に行って作業していたことが、AIなどの装置を取り付けることにより、現場へ行かずに問題を発見し、そして解決までしてくれることになるでしょう。今後は、AIやITなどといかに連動していくかが重要となっていくと思います。

 あとは、グローバル資源をしっかり活用していきます。インターネットの普及のおかげで、海外の研究機関の情報がすぐに入手できるようになりました。そして、当社の研究もインターネットで世界に発信できます。将来的には、世界的な衛生管理のガイドラインを作成できるまでに成長できればと考えています。今後も、専門分野の第一人者を目指していきます。


(インタビュー日時: 2020年6月15日)


※1 Food Safety System Certification 22000の略であり、EU食品・飲料産業連合(CIAA)の支援の元で開発された食品製造組織向けの新しい食品安全システムの規格。
※2 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデック)委員会から発表され 国際的に認められている製品の安全を確保する衛生管理の手法:同社HPより

会社概要

エコア株式会社
代表取締役社長: 宮澤 公栄
本社所在地: 東京都立川市羽衣町1-5-15
業種: 衛生管理事業

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