多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

危機に立ち向かう多摩地域の中小企業

経営者インタビューNo.02 株式会社アトム精密

2020年7月27日

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 半導体製造装置などの開発・製造を行う同社。八王子市内の若手経営者と設立した㈱発ジャパンのメンバーとともに、コロナ禍で戦う医師をサポートするため、PCR検査用の感染予防検査ボックスを開発・製造した。同社の一瀬社長に、コロナ禍での業況や発ジャパンの取組みについてお話を伺った。

代表取締役 一瀬 康剛氏

貴社の概要について教えてください。

 当社は、半導体製造装置や各種自動装置の開発・製造を行っています。具体的に言うと、工場内で製品を「搬送・洗浄・検査」する装置の設計・開発を業務の柱としています。この3つを軸に業務を行っていますので、様々な業種から受注を受けることができます。搬送を例に挙げると、工場内で運ぶ製品が半導体、食品、医療器具などと違うだけで、当社ではすべて対応可能なのです。

 当社の特徴は、「寄り添う営業」をキーワードに、困っているお客さまに対して、提案型の営業を行っていることです。製品の仕様を決める段階からお客さまと相談を重ねて開発します。このように新製品の開発業務を行っていると、他社との価格競争がありません。また、製品の仕様を決める段階から関わるため、受注が他社に行くこともありません。

 以前は、売上のほとんどを一社に依存していましたが、リーマン・ショックなどを経験し、一社取引では急な経済情勢の変化に対応できないと感じています。そのため、新規の取引先を増やすために積極的に「寄り添う営業」を行っています。その結果、メイン取引先以外の売上比率は高まっています。

4~5月の業況はいかがでしょうか。

 一部の取引先からの受注は減少したものの、半導体関連の受注が好調なため、全体的な売上は順調に推移しています。要因としては、5Gや電気自動車、コロナ禍での在宅勤務等でパソコンなどの需要の増加が挙げられます。当社の受注から納品までのリードタイムは、平均4カ月程度のため、現在は、新型コロナウイルスの影響が出る前に受注した業務を行っている状態です。また、一部の電子部品で入手しづらいものもありましたが、ほとんどの部品が半年から1年以上前にオーダーして事前に調達済みのため、部品の不足は発生していません。今後、コロナ禍の影響が出てくるとすると、6月以降になると思っています。

新型コロナウイルスへの対策は何か行いましたか。

 まず社外向けですが、2月には、当社のパートナー企業や、同じ企業から受注している同業他社との間で、万が一、感染した社員が出た場合には情報をオープンにする協定を締結しました。この協定により、一部企業で業務が停止した場合でも、他の企業から迅速に部品供給を行うことによって、受注先企業の製造ライン全体には影響を与えないようにできます。今のところは、感染者が出るような緊急事態は発生していないので、この協定は発動していません。

 次に、社内向けの取組みです。例えば、オンライン会議を行うために大型TVを購入したり、2時間おきに事務所や工場を消毒したり、トイレの設備まで新しくしました。また、勉強の意味も込めて、設計部門の新入社員に事務所の入り口に置く消毒液を足で噴射させる機械を設計・製造させました。私には、社員が感染しないように設備や環境を整えることしかできません。そのため、できることから対応していきました。

㈱発ジャパンでPCR検査用BOXを開発・製造したとお聞きしました。

 八王子市内の若手経営者と設立した㈱発ジャパンのメンバーとともに、PCR 検査を行う医師をウイルス感染から守る感染防止検査ボックスの開発・製造を行いました。発ジャパンに依頼があり、代表を務める栄鋳造所の鈴木社長から私に相談があったその日には、CADで設計図を作成し、現場の医師と相談を重ねながら 5 日後には製品を納品しました。納品後も、発ジャパンのメンバーとともに医師からの要望に応じながら現場の運用サポートを行っています。今回、いち早く取組むことができたのは、お客さまが喜ぶことをする、困っている企業に惜しみなくサポートするという発ジャパンのコンセプトがあったからです。

 中小企業の横のつながりを大切にするのが発ジャパンです。今後、感染防止検査ボックスの受注が増加したとしても、メンバー企業内で仕事を抱え込む気はありません。新型コロナウイルスの影響で苦しんでいる中小企業に製造を委託して、仕事を振り分けることが出来ればと考えています。

感染防止検査ボックス

最後に、同じ中小企業の経営者に向けて、メッセージをお願いします。

 困っているときは、気が滅入って塞ぎこみがちになります。こういう時こそ、他人の意見を聞くことが大切です。そのために、「俺は大変なんだぞ」と手を挙げましょう。アクションを起こすことで、仕事が舞い込む可能性も出てきます。これは、飲食店が困窮している姿をテレビで放映すると、全国から支援が来るのと同じかと思います。中小企業の経営者の中には、仕事がなくて困っている同じ中小企業に手を差し伸べる方もいると思います。飲食店と同様に製造業の経営者も、「大変な人ほど騒いでください」というのがメッセージです。


(インタビュー日時: 2020年6月17日)


※ アトム精密の一瀬氏は、八王子市内の若手経営者とともに「㈱発ジャパン」を2019年に設立し、中小企業の海外支援や製品開発などの支援を行っている。詳細については、同社ホームページを参照。

会社概要

株式会社アトム精密
代表取締役: 一瀬 康剛
本社所在地: 東京都八王子市弐分方町571-1
業種: 半導体製造装置などの開発・製造

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