多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

多摩地域におけるふるさと納税の動向

2023年1月25日

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多摩地域におけるふるさと納税の動向


 2022年度に不交付団体となった自治体は全国で73団体あり、そのうち多摩地域の自治体は、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、小金井市、国分寺市、国立市、多摩市、瑞穂町の11団体に上る。例えば、八王子市と立川市の2021年度の寄附による税額控除額は、八王子市が15億4,144万円、立川市が6億5,310万円であるが、八王子市は普通交付税の交付団体であるため、実際の減収額は15億4,144万円の25%の3億8,536万円となる。一方、不交付団体である立川市には補填が行われず、控除額全額が自治体の減収となり、結果として立川市の方が減収額は大きくなる。

 東京都区部においても税金の流出は問題視されている。2022年度の流出額が87億円を超えた世田谷区では、自治体の広報で「ふるさと納税特集号」を発行し、世田谷区への寄附を募るとともに、税金流出の実情を訴えている。ふるさと納税が盛り上がりを見せる裏では、各所から税金の流出による行政サービスの低下を懸念する声が上がっている。

 表1は、総務省の公表データに基づいて当研究所が推計した2021年度の多摩地域におけるふるさと納税による寄附金収支ランキングだ。1位の檜原村と2位の奥多摩町では流入超過となったものの、他の全ての自治体で流出超過となった。多摩地域全体の平均では、住民1人当たり1,894円のマイナスと推計され、ふるさと納税による減収の影響の大きさを示している。また、当然のことながら普通交付税の不交付団体である自治体ほど、流出超過額が大きくなっている。多摩地域全体の2021年度の寄附による税額控除額は152億8,796万円と、寄附の受入金額15億358万円の10倍以上となっており、多摩地域全体で見ても圧倒的に流出額が流入額を上回っている。ただ、寄附の受入金額は、ふるさと納税が始まった2008年度のデータである7億4,286万円と比べるとおよそ2倍近くに伸びており、今後もさらに受入金額を伸ばす可能性は十分あるといえるだろう。

 自治体別の寄附の受入金額を見ると、府中市(4億844万円)、町田市(2億3,817万円)、小金井市(1億7,212万円)、八王子市(1億2,261万円)、国立市(9,775万円)などの自治体で多かった。しかし、これらの自治体では寄附による税額控除額も同様に多い傾向があるため、収支には反映されづらいのが現状である。

表1 2021年度多摩地域自治体別

ふるさと納税による寄附金収支ランキング

(出所)総務省「令和3年度受入額の実績等」及び「令和4年度課税におけるふるさと納税に係る寄附金税額控除等の適用状況」より当研究所推計
(備考)自治体名の※印は、令和4年度普通交付税不交付団体。
寄附による住民1人当たりの収支については、②から③を引き、各自治体の人口で割って算出している(ただし、2022年度普通交付税交付団体は、③の値を0.25倍している)