多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

多摩地域における酒造り

2022年7月29日

ページ 2/2

株式会社スイベルアンドノット -クラフトビールでつなぐ地域の絆


スイベルアンドノット 見木久夫氏

 酒文化の多様化が進む近年、存在感を高めているのがクラフトビールである。各地の飲食店のメニューにはその地で造られたクラフトビールが並び、地域における酒文化の象徴の一つとなっている。多摩地域内に15か所あるクラフトビール醸造所の中でも、地域資源を積極的に活用したビール造りを行っているのが、2010年に武蔵野市で創業した株式会社スイベルアンドノットである。「私たちのクラフトビールと、地域にある業種の垣根を超えた様々なものを掛け合わせて、新たな価値をどんどん生み出していきたい」と語るのは、同社の代表取締役である見木久夫けんもくひさお氏。見木氏は、広告事業などを通じて地域活性化の一端を担う内に、武蔵野エリアを象徴するような名物を作りたいという思いを抱くようになった。そのような中、2017年にクラフトビールと出会い、酒造免許を取得。2018年には、JR中央線の武蔵境駅から東小金井駅間の高架下にある複合カフェ「ond」内に醸造所を併設した「26Kブルワリー」をオープンした。

 クラフトビールの世界では、自分たちの商圏がはっきりしていることが多く、近隣の同業者との情報交換や技術提供が積極的に行われている。クラフトビールは、他社の商品で替えが利くものではなく、それがこの業界の面白さでもあると見木氏は考えている。

 同社が今までに作ったビールは通算100種類を超える。当初から地域とつながるブルワリーでありたいと考えていた見木氏は、様々な形でそれを実現している。例えば、地域で採れた農産物をビールの副原料として使用しているほか、武蔵野市内の数か所でビールの主原料となるホップを育て、それを使用したビールの製造などを行っている。また、イベントの開催にも積極的だ。2018年から開催している「中央線ビールフェスティバル」では、沿線のクラフトビール醸造所に自ら声をかけ、例年10か所以上のブルワリーが出店している。近隣地域の様々なクラフトビールが一堂に会する貴重な機会として、多い年には2万人近くを集客しているという。

 見木氏は、「近隣や都内商圏でも通用するようなビールを造ってこの地域を潤していけるよう、事業の拡大も視野に入れています」と今後の展望を口にした。同社のビールを、多摩地域以外にも様々な場所で味わうことができる日も近いかもしれない。

これからの多摩地域の酒造り


 長い歴史の中で、日本酒造りを通じて事業を発展させ、地域とともに歩んできた石川酒造や小澤酒造と、地域でのクラフトビール造りを通じて、新たな酒文化の発展に尽力するスイベルアンドノット。いずれの事業者にも共通するのは、酒造りを通じて多摩地域を盛り上げていきたいという思いである。

 日本酒が中心であった昔の酒文化は時代の流れとともに変化を遂げ、今では多様な種類の酒が登場している。しかし、酒が人々の暮らしに寄り添い、生活に彩りを与えるものであるということはいつの時代も変わらない。今後も多摩地域における酒造りは、時代に合わせてその形を変えながらさらに豊かなものとなり、私たちを楽しませてくれることだろう。(畑山若菜/編集:野村智子)

図 多摩地域酒造りマップ

『多摩けいざい』トップへ戻る