多摩けいざい

たましん地域経済研究所レポート

子育て環境リサーチ2022

2022年4月25日

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子育て支援


 新型コロナウイルスの流行により、子どもや親同士が気軽に交流できる機会が大幅に減り、子育てに不安や孤独を感じる親が増えている※1。未就学児、中でも3歳未満の子どもは家庭で子育てを担う時間が長いため親の負担は大きく、人手や支援を必要とするのも乳幼児の間が多い。子育て支援の軸では、主に乳幼児を育てる家庭に関係する行政や金銭的な補助サービスが充実している自治体を調査した。

 最も高い得点となったのは八王子市であった。その要因としては、「未就学児1万人当たりの地域子育て支援拠点事業に関する施設数※2」や「未就学児1万人当たりの利用者支援事業実施数※3」の得点が高いことが挙げられる。多摩地域の中で最も人口が多く子どもの数も多い八王子市であるが、子育て支援関連施設やサービスも充実している。多摩市もこれら2つの指標が高得点だった。福生市は「産前・産後サポート事業」の得点が高く、対象期間内の利用回数に上限を定めていないなど、手厚いサポート内容となっている。他に、府中市や調布市でもこの得点が高かった。

 また、金銭的な補助サービスについて、「子ども医療費助成制度における所得制限の有無」では、全対象年齢で所得制限を設けていないのは26自治体中9つであった(八王子市、武蔵野市、青梅市、府中市、町田市、福生市、多摩市、羽村市、西東京市)。武蔵野市では、現在一般的に15歳までが対象の子どもの医療費助成制度の上限を18歳に設定している。なお、今回の調査の対象外である西多摩郡の日の出町と檜原村でも、同様に18歳が上限となっている。

住環境


 多摩地域の市町村はどこもそれぞれの特徴や魅力を持っているが、データを使い客観的に子育て環境を俯瞰するために、今回は交通・商業・医療・自然環境・治安に分けて比較し、総合的な得点を算出した。

 多摩市では、どの項目についても比較的高い得点を獲得した。中でも自然環境が高得点で、「可住地面積に占める公園面積の割合」については26自治体の中でトップであった。多摩センター駅からアクセスできる多摩中央公園をはじめ、市内に規模の大きい公園が多くあることが高得点につながっている。同時に商業についても平均値を上回っており、バランスのとれた住環境となっていることが読み取れる。府中市も各カテゴリーのバランスがとれており、特に交通の得点が高い。府中市内には京王線の駅が6つあり、各駅間の距離が短いことなどが影響していると考えられる。武蔵野市は、吉祥寺駅周辺を中心に商業が栄えており、商業の得点が突出して高かった反面、治安の得点が低かった。立川市など他自治体のデータを見比べても、商業と治安は反比例する傾向にある。福生市は、交通の得点が他自治体と比べて非常に高かった※4。青梅市は医療の得点が高く、特に「12歳以下人口1万人当たりの小児科数」が多いことが高得点につながっている。

多摩地域の未来に向けて


 今回は子育てのしやすさに焦点を当て、様々な指標から調査を行った。子どもの健全な育成には家庭環境はもちろんのこと、周囲の環境も大きく影響を及ぼすと考えられる。地域の中に様々な環境がバランスよく整っていくことで、子育てしやすい街になっていくのではないだろうか。

 今後ますます少子化が進むことは確実で、次世代を担う子どもたちを育てる環境づくりは地域社会にとって、地域を存続させるためにも避けては通れない道である。子育てを家庭だけで抱えるのではなく、地域全体・社会全体で行っていけるよう、自治体や地域の人、団体、企業が連携する仕組みづくりを進めていかなければならない。多摩地域の未来を託す子どもたちのために、今後は今まで以上に各自治体の創意工夫や地域一体となった子育て支援が求められる。(畑山若菜/編集:野村智子)


※1 例えば、墨田区(2021年)「コロナ下における子育て世帯への影響調査」
※2 子育て広場や子育て支援センター等
※3 子育て家庭や妊産婦が各関係機関を円滑に利用できるよう、相談や情報提供等必要な支援を行う事業
※4 交通カテゴリーに使用した「住民の最寄り駅までの平均距離」は、各自治体の町丁の中心地から最寄り駅までの平均直線距離を人口で重み付けして算出したものである。福生市は市内にバランスよく駅があり、どこの町丁からでも比較的駅までの距離が短いため高得点につながった

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