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特集 多摩のうごきを知る

ソーシャルビジネスでつなぐ福祉と社会

2022年1月25日

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 ビジネスによって社会的な課題の解決を目指すソーシャルビジネスは、国内外で様々な取組みが行われており、新しい社会貢献の形として定着しつつある。今回は、多摩地域で福祉や医療に関わる事業を通じて社会に新たな価値をもたらしている2社を取り上げる。


社会的課題の解決を目指すソーシャルビジネス


 「ソーシャルビジネス」とは、バングラデシュのグラミン銀行創設者であるムハマド・ユヌス氏が世に広めた言葉である。ユヌス氏はソーシャルビジネスの原則として、利益追求ではなく社会問題の解決を目的とすることや、投資家には元本以上の配当を還元しないことなど7つの項目を掲げている。また、経済産業省の「ソーシャルビジネス研究会報告書」では、社会的課題の解決を事業活動のミッションとする「社会性」、ビジネスとして継続的に活動を行う「事業性」、その活動が社会に広がることを通して新たな社会的価値を創出する「革新性」の3つの要素を満たす事業をソーシャルビジネスと定義している。

 ソーシャルビジネスをめぐる動きは年々活発化しており、それは多摩地域においても同様である。今回はその中でも、福祉や医療と社会をつなぐ取組みに力を注ぐ2社を取り上げる。雑貨の販売によって障害者福祉の間口を広げるとともに社会への発信にも尽力する株式会社マジェルカと、訪問看護事業やカフェの運営により地域と医療をつなぐ架け橋となることを目指す株式会社シンクハピネス。ビジネスを通して社会の課題解決に取り組む両者の事例から、地域社会に与える影響や、その先にある風景について考えてみたい。


株式会社マジェルカ ―偶然の発見がきっかけで飛び込んだ福祉の世界


 吉祥寺にある株式会社マジェルカは、全国の福祉施設で障害者が作った雑貨を集めたセレクトショップを運営している。福祉を全面に押し出すのではなく、福祉施設と対等な立場での取引を通じて、商品そのものを正当に評価し、適正な価格による仕入れと販売を行っている。代表取締役の藤本光浩ふじもとみつひろ氏がマジェルカを開業したのは2011年。当時、福祉施設で作られた商品の販路は福祉バザーや福祉ショップなどに限定されており、同社の取組みは非常に革新的だったという。

 事業を始めるきっかけとなったのは、藤本氏がメーカーのバイヤーをしていた時に出会った木製の玩具である。「目をつけた商品が、たまたま奥多摩の福祉施設で作られたものでした。障害があっても、これほど素晴らしいものを作れるのかと大きな衝撃を受けました」と藤本氏。興味を持って調べてみると、バイヤーの目から見て一般の市場でも十分通用しそうなものも多かったが、それらの存在は世間にはほとんど知られていなかった。その時の思いを藤本氏は、「まるで、埋もれていた宝物を発見したような気持ちでした」と表現する。居ても立ってもいられなくなった藤本氏は、前職を辞めすぐに起業に向けて動き出した。


マジェルカ 代表取締役 藤本氏

 早速全国の福祉施設に飛び込みで営業に向かうと、どこも一様に「ぜひお願いします」と好意的な反応を示した。門前払いも覚悟していた藤本氏は、施設側が売る場所を探していたことに内心驚いたという。施設の職員は福祉のプロであっても、商売の経験やノウハウはない人がほとんどで、作品の商品化やブランディングなどはやりたくてもできなかったのである。

 こうして始まったマジェルカは、その後多数のメディアで取り上げられるようになり、取組みを知った福祉施設から「うちの商品を置いてほしい」と依頼が来ることも増えた。しかし、単価が安い雑貨は売る手間がかかる割に利益は小さく、ビジネスとしての難しさも痛感した。福祉施設との価格交渉は、提示される価格が安すぎる、もしくは高すぎるなど苦労することも多い。試行錯誤を重ねながら店を運営するノウハウを培い、マジェルカは昨年10周年を迎えた。

 店を続ける原動力となっているのは、利用客や取引先の作業所などから届く様々な声だ。商品を購入してからその背景を知った客は驚き、「いい買い物をした。なおさら大切にしたい」と口にする。また、作業所からは「売上が増加した」「商品に対して自信を持てるようになった」などの声が挙がっている。作った本人が店を訪れて、自分の作品を購入していくこともあるという。当初は素敵な商品を世に広めたいという、いわばバイヤー魂に突き動かされていた藤本氏だが、障害者やその家族から感謝を伝えられることで、自身がやってきたことが社会に新たな価値を創出していることに気付き、「ウェルフェアトレード」の普及へと歩みを進めた。


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