多摩けいざい

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持続可能な地域づくりに向けた檜原村の挑戦

ひのはらファクトリー

吉田光世よしだみつよ氏(株式会社ウッドボックス 代表取締役)

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檜原村の大自然の中に施設を構えるひのはらファクトリー

貴社の概要と吉田社長の経歴について教えてください。

 当社は、2008年に大手電機メーカーを早期退職した前代表者の山口雄二が立ち上げ、当初は電子計測装置の製造などを行っていました。元々ものづくりが好きだった山口は、ものづくりを仕事にしたい人を応援しようと、徐々に事業を多角化していきました。私が当社に入社したのは、今から6年程前のことです。小さい頃から洋服を作るのが好きでデザイナーを志していた私は、大学でデザインなどを学び、卒業後は縁あって広告業界で働くことになりました。その後、いくつかの会社を経験しながら無我夢中で働いていましたが、前職を辞めた時にたまたま山口と出会い、意気投合しました。山口から、「やりたいことがあるなら、うちの会社でやってみればいいじゃないか」と誘われ、自分が作ったもので誰かが喜んでくれる、そんなものづくりの楽しさを知っていた私は、ものづくりに積極的かつ肯定的な当社の姿勢に惹かれて入社を決意しました。なお、今年の10月には山口から事業を承継し、当社の代表者となっています。

 現在当社では、7月にオープンしたじゃがいも焼酎造りを行う施設である「ひのはらファクトリー」の運営や、檜原村のヒノキを使ったエッセンシャルオイルや木工品の製造、さらには三鷹市のものづくり創業支援施設「工房ファブスペースみたか」の運営を行っています。

焼酎造りで杜氏を務める吉田社長。館内では製造の様子を見ることができる

貴社が檜原村で事業を始めたきっかけは何ですか?

 当社がここ檜原村で事業を始めたのは2019年のことで、村のヒノキを使ったエッセンシャルオイルの製造に乗り出したのがきっかけです。まだ村とは何のつながりもなかった頃、当時は経営が振るわず、会社を続けていくにはどうすればいいのだろうか、と思い悩んでいました。「いずれは会社を継ぐことになる。そうなった時に自分がやりたいこと、お客様のニーズ、そして地域への貢献、その3つを満たすものはないだろうか」と自問自答する日々が続きました。そんな中で目をつけたのは、以前から当社の人気商品であったエッセンシャルオイルでした。経営が苦しい中でもこの商品は売れていく、つまりお客様に必要とされている、その事実に私の心は救われました。ならば、近隣でヒノキの産地である檜原村のヒノキでエッセンシャルオイルを作ってみてはどうだろうか、とひらめきました。村はこの提案を喜んで受け入れてくれ、私自身もこの事業なら一生関わっていけると思いました。そうして村で新たなスタートを切った当社は、ものづくり企業らしく、まずは製品を製造する機械を作るところから始めました。

 林業は檜原村の伝統ある産業です。地域の外から新たに参入する当社が、村のヒノキを使って事業を始めるにあたり求められたのは、革新性でした。この事業は、いかに伝統と革新の調和を図れるかどうかに懸かっていました。当社のヒノキ製品のブランド名の「+Fプラスエフ」は、3つのキーワードである伝統・革新性・調和をそれぞれ森(forest)・未来(future)・自由(freedom)と言い換え、これらの英単語に共通する頭文字から名付けました。今では、エッセンシャルオイルのほかにもヒノキを使った木工品などを製造しており、ヒノキ製のマスクケースが人気です。

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