多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

ブリヂストン イノベーション パークに迫る

2021年1月25日

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共感から生まれるオープンイノベーション


 現在、自動車産業は100年に一度と言われる大変革期を迎えている。ブリヂストンでは、新たに中長期事業戦略を策定し、2020年を新たな価値創造の起点となる重要な年と位置付けた。イノベーションを新たな成長の起爆剤に、競争優位を築き、社会や顧客の課題を持続的に解決していく目標を掲げている。

 同社が今後イノベーションを起こすうえで重要視するのがタイヤ製造とデジタルとの融合によるDX(Digital Transformation)である。例えば、航空機のタイヤは、使用する滑走路の距離や環境によって、その寿命が大きく異なるため、交換時期を予想できず、整備士の目視によって交換を判断している。そのため、整備士の配置や在庫の確保に常に気を配らなければならず、現場の負担が大きかったという。同社ではこの課題を解決するため、タイヤのデータと航空会社が保有するフライトデータとを組み合わせることによって、航空機のタイヤ交換時期を予想する独自のアルゴリズムを開発した。この結果、航空会社の整備工数の削減や適切な在庫管理の実現へと至っている。

ブリヂストン イノベーション ギャラリーには、同社が開発している月面探査車用タイヤも展示されている。

 このタイヤ製造とデジタルとの融合を技術で支える中核拠点として機能するのが、ビーイノベーションとビーモビリティである。この拠点では、社外パートナーとのオープンイノベーションにより、新たな価値を作り出すことを狙っている。さらに、研究開発拠点とテストコースを隣接させることで、試作したものをすぐに実証できるようにした。これによって、商品開発のスピードを更に加速させようとしている。

 社外パートナーとの共創の入口となるのが、イノベーションギャラリーである。この施設は、日本で唯一のタイヤとゴムの博物館であり、同社の歴史から最新の技術まで触れることができる。また、同施設は地域に開かれており、誰でも自由に無料で入場することができる

 同施設の特筆すべき点は、ビーイノベーションの来訪者が同施設を通るよう導線設計がなされていることである。これは、同社の最新技術を体感してもらうことを通じて、社外パートナーと新たなビジネスを創出させるという狙いがある。

創業者から引き継がれる地域への想い


 1931年にブリヂストンを創業し、日本を代表する企業へと発展させた石橋正二郎氏。石橋氏は、日本のモータリゼーションへの貢献はもちろんのこと、地域と従業員のコミュニティづくりや、居住環境、働く人の健康にも配慮した取組みを行ってきた。例えば、東京工場開所当初から工場周辺に社宅・病院・スーパーマーケット・スポーツ施設などの整備や小学校の建設などを行ってきた。また、排水施設の整備や工場周辺の植樹など、景観に配慮した取組みも行っている。

最新技術を説明する館長の森氏

 石橋氏の想いは、現在でも引き継がれている。広報課の宮下氏は、「今後も地域とともに豊かな生活を作っていきたいと考えています。小平市にブリヂストンがあって良かったと誇ってもらえるような活動を今後も続けて行きたい」と話す。

 多摩地域の中小企業との連携にも前向きである。ギャラリー館長の森氏は、「それぞれの会社がお持ちの得意な専門分野があると思います。当社の最新技術や目指す姿をギャラリーで知っていただき、お互いの持つ技術を組み合わせることによって、新たなビジネスアイデアを一緒に生み出していきたい」と共感の場から生まれる新たな可能性を期待している。

 高い研究開発力を持った中小企業が多く立地する多摩地域。オープンイノベーションを推進するブリヂストンとの共感からの共創が実現すれば、地域経済の更なる発展が期待できる。(西郷誠)


※ ブリヂストン イノベーション ギャラリーの見学については、同施設ホームページを参照してください。

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