多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

ヤクルト中央研究所に迫る

2019年10月25日

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90年近くに渡るヤクルトの乳酸菌研究


 ヤクルト中央研究所では実際にどのような研究が行われているのか。今回は、同研究所 上席参与の宮﨑氏に話を伺った。

 宮﨑氏は、同研究所に勤務して30年弱になる。府中市在住。これまでのキャリアでは、化粧品の研究開発や研究管理の仕事に携わったが、15年ほど前に食品研究所に異動し、乳酸菌の持つ新しい機能に関する研究を行うチームリーダーとして活躍した。

中央研究所 上席参与 宮﨑氏

 「新しい研究所ができたときは、嬉しさ半分、プレッシャー半分という気持ちでした」と、リニューアルされた同研究所に対して率直な印象を語る宮﨑氏。「これだけ素晴らしい施設、設備、環境を整えてもらったので、それに応えて貢献していかなければというプレッシャーがあります。一人あたりの研究スペースも広く、設備も最高のものを使用しています。ヤクルトの原点である代田の研究重視の姿勢を反映している研究所だと思います。」

 宮﨑氏のチームは、前述のとおり乳酸菌の持つ新たな機能について研究している。最近の研究業績として、摂取することでアレルギー症状を軽減する乳酸菌の発見や、ストレスの緩和や睡眠の質の向上に貢献する乳酸菌の機能の発見などがあるという。「10月1日に関東一都六県で発売した『Yakult(ヤクルト)1000』という商品は、乳酸菌の新しい機能の発見という我々の研究の成果を活かして、当社初の「機能性表示食品」として販売されています。」

Yakult(ヤクルト)1000)

 研究へのモチベーションは社会への貢献という。「私たちの研究の最終目標は、成果が商品として世の中に出ることです。商品がお客さまの手に届いて、反応が返ってくるときが一番嬉しい」と話す宮﨑氏。また、「ヤクルト中央研究所では、人を育てていくことがずっと継続して行われてきて、私も先輩たちに育ててもらった恩があります。部下たちが研究者としてレベルアップしていくために、私もそのサポートをしていきたい」と、今後への想いを語ってもらった。

環境や教育における地域との関わり


遊歩道の清掃活動

 同研究所では、国立市との連携も盛んである。例えば、市の環境審議会や環境ネットワークへの参画、研究所敷地外周の遊歩道の整備と地域への開放、清掃活動など、地域の環境保全活動に対して積極的に関与している。

 また、国立市教育委員会と連携し、同研究所内にある国際会議場を会場として、市内小学校の自由研究発表会を毎年実施している。研究発表後にはその内容について子どもたちと研究員との間で意見交換を行っており、子どもたちの貴重な成長の機会となっている。

 ちなみに、筆者も会場となる国際会議場を案内していただいたのだが、その素晴らしい設備に驚嘆した。320ある座席には全てマイクとコンセントが備え付けられており、発言時には前面のモニターで発言者の顔が映し出される。このような素晴らしい環境での学習機会を子どもたちに提供できることは、市の魅力向上にも繋がっていると言えるだろう。

 研究所の立地についてはどうだろうか。事務部部長の関井氏は、「本社からも1時間強で来れる距離にあり、都心の本部との人的交流もしやすい。自然環境の良さと利便性とのちょうど良いバランスが保たれている」と話す。多摩地域はもともと大学や研究機関が多い地域であるが、やはりこのような点が立地上の強みになっていると考えられる。多摩にとって重要な地域資源の一つである同研究所。今後の発展と、地域との更なる連携が期待される。

(中西 英一郎)


※ 機能性表示食品とは、「事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品」を指す(消費者庁ホームページより)。本文中で紹介した「Yakult(ヤクルト)1000」の届出表示ついては、ヤクルト本社ニュースリリースを参照。

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