多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

東芝府中事業所に迫る

2019年4月25日

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中小企業とも深い結びつきを持つ府中事業所


 雇用規模や生産規模が大きいというだけではなく、同社と多摩地域とは、企業間の取引を通じて地域経済と深く結びついているという側面もあります。

 たましん地域経済研究所が㈱帝国データバンクの提供しているデータセット「COSMOS2」を用いて、多摩地域企業の取引関係について調べたところ、東芝グループを主要な販売先としている企業数は、他の企業と比較して最も多いという結果が出ています。つまり、多摩地域の中小企業にとって東芝は非常に重要な取引先の一つであると考えられます。

 この点について、東芝府中事業所総務部部長の三浦氏に尋ねたところ、「府中事業所の創業時からその周辺にお取引先の企業が工場を作られてきた歴史があり、そのようなことが積み重なった結果、現在でも多くの多摩地域の企業とお取り引きさせていただいているのではないでしょうか」と話します。

 推察するに、上記の理由の他にも、近年まで東芝日野工場や東芝青梅工場も立地していたという点や、多摩地域では電子部品・デバイス製造業や情報通信機械器具製造業といった業種が集積しているといった点も、同社との取引関係が相対的に多い理由として影響しているものと考えられます。

東芝府中事業所総務部部長 三浦氏

地域と企業との共存に向けて


 これまで述べてきたように、多摩地域に対して大きな影響力を持っている同事業所ですが、反対に、同事業所から見た多摩地域はどのように見えているのでしょうか。

 三浦氏は、府中の立地上のメリットについて、「鉄道や道路などの交通の利便性が良い」、「地盤が固い」といった点を挙げます。「府中事業所の従業員のうち、約3分の1が府中市民ですが、他の従業員の居住地は、かなり広域に渡ります。その中で、府中という地は広い範囲から人が集まりやすい場所だと認識しています。」(三浦氏)

 その他、地域や行政との関わりについても多面的な活動を通じてネットワークを形成しています。例えば、昨年度実施した納涼祭では、事業所内を地域住民の方々に解放し、お笑いライブを開催したり、職場ごとに飲食やヨーヨー釣りなどの屋台を出店したりなどし、同事業所の従業員と一緒になって楽しんでもらうことで地域との交流を深めました。当日は約8,000人の来場者があり、賑わいを見せたといいます。その他にも、東芝ラグビー部のファン感謝デーの開催や、同事業所の吹奏楽団による訪問演奏のほか、府中市や府中警察署、府中消防署の各種会合やイベントへの参加など、様々な面で地域との関わりを築いています。

東芝ラグビー部のファン感謝祭の様子

 また、防災面でも地域に貢献しています。同事業所内にあるグラウンドは、地域の広域避難所となっているほか、倉庫には従業員10,000人×3日分の食料が備蓄されており、 いざという時に従業員や地域住民の避難拠点として機能します。その他、東日本大震災を機に、同事業所の呼びかけによって「府中市企業防災協議会」が立ち上がり、防災に関する情報共有と相互協力体制を構築しています。

 このように、地域と様々な関わりを築いている背景について、「この地で事業をしている以上、色々な形で地域の皆さまにはご理解・ご協力をいただいている面があります。 地域と共生しているという認識がないと私たちの事業はできません。それとともに、『東芝は元気です』ということを少しでも地域の皆さんにアピールしていきたいとも思っています。」と三浦氏は話します。

 今後、同事業所のように長期間にわたって地域内に安定した雇用の場を生み出す企業の重要性はますます高まっていくと考えられます。変化する時代の環境に適応しながら、地域と企業とが共存していくためのヒントが同事業所にはありそうです。

(中西 英一郎)

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