多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

多摩地域における民泊の動向

民泊事業者インタビューNo.02

2018年10月10日

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お話を伺った方:株式会社あれいすと 代表取締役 壷井あゆみさん、取締役 壷井隆さん
取材日:2018年9月19日

壷井あゆみさん(左)と壷井隆さん(右)

民泊を始めたきっかけについて教えてください。

 長らく別の所に住んでいたのですが、両親が高齢ということもあって、実家のある日野市に戻ってきたんです。そのとき、家の部屋が余っていたので何か活用できないかと思い、民泊サイトに登録しました。

 その後、初めてのゲストを迎えたのですが、そのゲストがオーストラリアの方でした。私の家は、周囲にこれといったものがない丘陵と川に囲まれた住宅街にある一軒家だったので、「なんでこんなところに来たの」とそのゲストに聞いたら、「ここのすぐ近くにある川沿いの土手の写真を見て、ジョギングするのにちょうど良いと思った」ということを言われたんです。私にとって、それは意外な答えでした。その他にも、そのオーストラリア人ゲストは、地域が持つ魅力を色々と教えてくれました。豊かな自然があるうえに、都心に出るのにそれほど時間がかからない。高尾山にも近いし、鎌倉、横浜方面にも行きやすいと。「日野は良いよ、価値がある」と言われたんです。これがきっかけとなって、民泊の可能性を感じ始めました。

家のすぐそばには浅川が流れている。ジョギングやサイクリングにはぴったりだ。

 もう一つ、民泊が良いなと思ったのは、私の父母が社会的に外と接点を持つうえで、民泊がちょうど良いと思ったからです。民泊を始める前は、家でずっとテレビを見ていて、あまり外出もしなかった父母が、ゲストが来ると「いらっしゃいませ」と、しゃきっとなる。これは良いかも。民泊を通じて、生涯健康的に生きていけるモデルができるのではないかと思い始めました。

 日野市でも地域全体が高齢化してきています。私の父母だけでなく、地域の高齢者の方も巻き込んで「しゃきっと」なってもらいながら、併せて地域資源も活かしていけば、地域を元気にするモデルが作れるのではないかと。そのような構想を描いて、民泊に本格的に取り組みはじめました。ただ、残念ながら父母は亡くなってしまい、今は私たち夫婦で民泊をやっています。

ちなみに、今は何部屋くらい貸しているのですか?

 今は、一応3部屋を民泊仲介サイトに登録してあります。普段予約を受け付けているのは2部屋で、3部屋目は必要に応じて使用しています。

 稼働率は、平均すると月の三分の一くらいです。ただ、ゲストから宿泊のオファー自体は相当来ていて、実はオファー全体の13%しか受け入れていないんです。もちろん、宿泊が重なってお断りするときもありますが、ゲストのうち、レビューに問題がある方や、ひとつもレビューがない方、身元がはっきりしない方などはお断りさせていただいています。 例えば、パスポートや証明書を見せてもらえますかと言った際に、渋られたりとか。そういう方は、何かあったときに怖いので宿泊をお断りさせてもらっています。

 ただ、13%じゃもったいないということもあり、最近は事前にハウスルール※1を送ってそれに対するレスポンスを見て判断することで、レビューがない人も受け入れるようにしています。

 私たちは、基本的にはゲストに対してこれといったサービスは何もしません。本当にただ部屋を貸しているだけです。ロングステイの人には、部屋の掃除やシーツ替えは希望すればやりますが、掃除機も洗濯機も好きな時に使って自分でやってもらえるようにしています。あとは、ゴミを数日に一回ケアするくらい。ただ、チェックインとチェックアウト時は必ずいるようにしていて、パスポートをコピーしたり、ハウスルールを説明したりといったことは当然しています。

部屋の初期投資はしましたか?

 初期投資は、ほぼしていません。キーボックスとクーラーの設置くらいはしましたが。布団なども以前からあったものをそのまま使っています。というのも、「今あるものをお貸しする」というのがこの事業のコンセプトだからです。始めから「私たちにはこれしかありません」と言っておけば、それでも良いという方が来ます。これは、シェアリングエコノミー※2の考え方です。

 私たちは、いずれ地域全体に広げていくビジネスを考えているので、「空いている部屋があれば誰でもできる」ということは、事業を進めるうえでの大きなポイントなんです。 ですから、あまり費用も時間もかけなくても、誰でも始められるという実例をつくることが重要でした。

貸している部屋の様子

※1 ハウスルール ホストがゲストに守ってもらいたい家の決まりごと。例えば、室内の土足禁止や禁煙、騒音を出さないといったルールをわかりやすく明文化したもの。
※2 シェアリングエコノミー モノ・サービス・場所などの個人が保有する遊休資産を、他の人と共有・交換して利用する社会的な仕組みや、それを仲介するサービスのこと。

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