多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

多摩地域の自治体におけるオープンデータの利活用動向

2018年4月25日

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多摩地域におけるオープンデータ推進の動向


 内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室による2018年3月19日時点での多摩地域におけるオープンデータ取組済自治体は、八王子市、府中市、調布市、町田市、日野市、東村山市、福生市、武蔵村山市、多摩市、稲城市の10市が挙げられています。その中でも、南多摩5市(八王子市、町田市、日野市、多摩市、稲城市)は、「広域連携によるオープンデータ利活用推進事業」を進めており、アイデアソン※5 の実施やLODチャレンジ※6への協賛などに取り組んでいます。

 前述したとおり、オープンデータの推進には、人材や予算といった資源面の課題が挙げられます。また、1自治体の限られたデータでは、ビジネスなどに繋げることが難しく、利活用の幅が限定されてしまいます。さらに、それぞれの自治体でフォーマットが異なれば、他自治体と比較する際、手間がかかります。これらは、既にオープンデータを公開している自治体でも挙げられている課題であり、近隣自治体間でヒト・モノ・カネといった資源の共有や、データの標準化、共通オープンデータといった仕組みができれば、利活用は進んでいくと考えられます。

日野市における取組み


日野市地域戦略室 中平副主幹

日野市情報システム課 髙橋課長

 多摩地域で積極的にオープンデータを推進している自治体の1つである日野市では、データの公開だけでなく、アーバンデータチャレンジ※7 への協賛、南多摩5市での連携など先進的な取組みを行っています。日野市地域戦略室の中平副主幹は、「日野市は、市長先導でオープンデータを推進している。市長は『諸力融合』をテーマに掲げており、行政だけでなく、市民や企業との協働・共創により、地域の課題を解決していくことを目標にしている」と言います。そのためには、まず市民や企業と地域の課題を共有する必要がありますが、行政が持つ情報が活用しやすい形で公開されていないため、連携が進まないという現状がありました。そこで日野市では、地域課題の解決に向けた連携を促進するため、オープンデータを推進しています。

 また、オープンデータの推進には、庁内におけるデータに対する意識改革も期待されます。日野市情報システム課の髙橋課長は、「オープンデータの推進により、庁内でもデータの活用が進むと考えている。職員が施策の策定や計画を立てる際になんとなくの感覚ではなく、エビデンスベースでの議論ができるようになってほしい」と言います。

 今後日野市では、庁内から市民や地域活動団体、地域内外の企業や大学、さらには周辺自治体へと対象を拡げた取組みを行い、地域一体となってオープンデータを推進する予定です。そのために、ホームページの更新方法なども見直し、オープンデータの利用者のニーズに沿った更なる情報の公開に向け、検討を進めています。

多摩地域のオープンデータの今後


 オープンデータを公開する自治体が増えつつある中で、その利活用状況については、明らかになっていないことが多いのが現状です。データを公開する自治体側としては、「単にデータを公開するだけでなく、いかに使ってもらうかが重要である。しかし、公開後のフィードバックがないため、効果が見えないところにオープンデータの利活用推進の難しさがある」と中平副主幹は言います。今後は、多摩地域に限らず、オープンデータを推進するうえで、利活用の調査も必要になってくると考えられます。例えば、閲覧数やダウンロード数なども一つの指標として挙げられるでしょう。

 地域活性化のためには、市民や地元企業に地域をもっと知ってもらうこと、その上で地域の課題を共有し、その課題の解決のために協働することが必要です。そのために、情報を提供する手段としてオープンデータの推進があります。今回は、自治体におけるオープンデータの推進について特集しましたが、民間企業が保有するデータの中にも、地域課題の解決に繋がるデータがあるはずです。今後は、官民一体となったオープンデータの推進と利活用が望まれるでしょう。


※5 アイデアソンとは、アイデア(idea)とマラソン(marathon)を掛け合わせた造語で、あるテーマについて短期間、集中的にアイデアを出し合うことで、新たな発想を創出しようとする取組み及びそうした取組みを主とするイベントを指します。
※6 LODチャレンジとは、オープンデータおよびLinked Open Dataの公開と活用のためのコミュニティ形成と技術の普及促進を目的として活動するLODチャレンジJapan実行委員会が主催するコンテストです。
※7 アーバンデータチャレンジとは、一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)が主催する地域課題の解決を目的とした、地方自治体を中心とする公共データを活用した年間のイベント開催を伴う一般参加型コンテストです。

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