多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

多摩地域の自治体におけるオープンデータの利活用動向

2018年4月25日

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 スマートフォンやタブレット端末の急速な普及などICT環境の変化に伴い、誰もが簡単に情報を入手し、データを加工・分析することができるようになりました。そのようななか、行政や民間企業が保有している様々なデータを公開する「オープンデータ」への関心が高まっています。今回の「多摩のうごきを知る」では、多摩地域の自治体におけるオープンデータ取組事例と更なる活用に向けた課題について特集します。

オープンデータ利活用推進の背景


 オープンデータとは、単なる情報公開とは異なり、誰もが自由に使え、かつ、再配布できるようなデータのことを指します。総務省のホームページでは、オープンデータの条件として、①機械判読に適したデータ形式で、②二次利用が可能な利用ルールで公開されたデータである必要があるとされています。推進の目的には、情報の公開により行政の説明責任を果たし、行政の透明性・信頼性を高めることや、庁内でのデータの利用性の向上による行政業務の効率化、官民協働による新しいサービスやビジネスの創出などが挙げられます。国家レベルでは、『政府統計の総合窓口(e-Stat)』※1や『地域経済分析システム(RESAS)』※2によるオープンデータの利活用が推進されていますが、各自治体の取組みはどのような状況なのでしょうか。

オープンデータ推進の現状


 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が2013年3月に公表した「オープンデータ取組済自治体※3一覧 」によると、当初オープンデータに取り組んでいた自治体は4つのみでした(図)。その後の推進により、2018年3月には、取組済自治体が47都道府県と278の市区町村に増加していますが、全体としては20%を下回っています。なぜ、取組自治体数が少ないという現状があるのでしょうか。

図 オープンデータ取組済自治体数の変遷

(出典)内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室「オープンデータ取組済自治体一覧」を基にたましん地域経済研究所作成

 自治体におけるオープンデータの推進や利活用が進まない理由として、基盤作りがなされていないことが挙げられます。推進にあたっては、人的資源や予算の確保、方針の策定、開示の方法などを定める必要があります。また、どのデータから開示できるようにしていくかといった優先順位の問題や、更新頻度など公開後の問題もあります。さらに、各部門から元となるデータを提出してもらわなければいけないため、組織内での意思統一も必要です。

 また、オープンデータ公開後の活用の推進についても先に考慮しておかなければいけません。例えば、データの著作権など二次利用のルールの策定や、データの誤り、悪用の対応については検討しておく必要があります。

 著作権の問題については、多くの自治体で既に、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス※4を活用しています。これにより、著作権を保持したままデータを公開し、利用者はライセンス条件の範囲内で加工や再配布などをすることができるようになりました。

 一方で、データの誤りに関しては、誤った情報を公開するくらいであれば、公開しない方が良いという消極的な意見もあります。しかし、仮に誤りがあっても、広く公開し、多くの人の目に触れることでより良いものにしていくという意識を醸成することも必要です。


※1 政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
※2 地域経済分析システム(RESAS)(https://resas.go.jp/)
※3 自らのホームページにおいて「オープンデータとしての利用規約を適用し、データを公開」又は「オープンデータの説明を掲載し、データの公開先を提示」を行っている都道府県及び市区町村を「オープンデータ取組済自治体」と定義しています。
※4 クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは、インターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」と意思表示をするためのツールです。

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